[Lancet Planetary Healthより]稲作をしているアフリカの村ではマラリア感染が70%増加の可能性
マラリアはマラリア原虫をもった蚊(ハマダラカ属)に刺されることで感染する病気で、依然として世界で最も重大な感染症の一つです。世界人口60億人のうち、最近の推定ではおよそ26億人がマラリアの危険にさらされ、推定で年間約5億人がマラリアの感染症状を示します。アフリカの多くの地域では、小さな子供たちが毎年1回以上マラリアの発作を経験し、外来診療所の受診や小児病棟への入院で最も多い理由がマラリアです。多くのアフリカ諸国の保健省は、マラリア撲滅を目指しています。一方で、コメ消費の拡大とともに、稲はアフリカで最も急速に拡大している作物です。収穫面積は1961年から2019年にかけて600%以上増加しました。今後も引き続き需要が高まると予測され、多くのアフリカ諸国の農業省は生産拡大を目指しています。
Lancet Planetary Healthに発表されたロンドン大学衛生熱帯医学大学院のカリスタ・チャン(Kallista Chan)による新しい研究によると、アフリカで水稲栽培を行うと、蚊の繁殖地を提供することで、地域社会のマラリア感染の蔓延を増やす可能性があることがわかりました。本研究では水稲栽培とマラリア感染の関係性について過去発表された報告のメタ分析を行いました。2003年以降、水稲栽培地域では、非水稲栽培地域に比べてコメマラリア感染が70%以上多いことを発見しました。一方で、2003年以前は、稲作はマラリアの有病率に影響を及ぼさなかったか、わずかに減少させたということを確認しました。その当時までは稲作がその地域に経済的繁栄をもたらし、非水稲栽培地域よりも蚊帳へのアクセスが多く、医療も充実していると考えられました。しかし、過去20年間で、ロールバックマラリアなどの計画により、アフリカ全体でより普遍的で公平なマラリア制御がもたらされた結果、水稲栽培地域でのマラリア感染リスクが相対的に高くなったと考えられます。
さらなる詳細な調査が必要ではあるものの、以上の結果は、コメの生産増加およびマラリアの撲滅という2つの開発目標の同時達成には農業分野と保健分野による協力が必要であることを示し、著者らは蚊の繁殖を抑える稲作技術の開発、蚊の繁殖の継続的なモニタリング・評価なしでの稲作振興・栽培面積拡大はマラリア感染の増加につながると警鐘を鳴らしています。
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