世界マラリアデーに向けたMalaria No More からのメッセージ

マラリア・ノーモアでは、4月23日にWHOから発表されたPATH、マラリア・アトラス・アナリシス、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などのパートナー団体と共同でCOVID-19による2020年のマラリア死者数の急増を食い止めるためには、雨季前に適切な対策をとる必要があるという、分析結果を報告しました。原文はこちら


世界マラリアデー:COVID-19を前に、マラリアから命を救い保健能力を最低限守る緊急の取り組みが必要だ。

(2020年4月23日、シアトル)各国は必要なマラリア予防や介入の取り組みを迅速かつ確実に提供することによって、今年40万人もの命を救うことが求められています。これらなしには、COVID-19のパンデミック(世界的な大流行)はマラリア発生件数を増大させ、死者数を倍増させかねません。

世界保健機関(WHO)「世界マラリアレポート2019」によると、マラリア感染の危険は今なお世界各地に存在し、毎年2億2800万人の感染と40万人あまりの死亡がある一方で、49か国ではゼロマラリア達成に向けて最終段階にあるとされています。2018年に、世界的な対マラリア対策によって、2000年と比べて約1億人の感染を防ぎ、約60万人の死亡を防いだとされています。

しかしながら、WHOではPATH、マラリア・アトラス・プロジェクト、ビル&メリンダ・ゲイツ財団といったパートナー団体と共に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な流行がマラリア流行国での反マラリアキャンペーンやマラリアだけではないベーシックな保健サービスが打撃を受け、その結果人道支援に大きな脅威になることへの懸念を示しました。2018年には、マラリアの死者数の67%を占める5歳未満の子どもや、サブサハラアフリカでは妊婦の3人に一人がマラリアによる影響を受けていました。

マラリア・ノーモアCEOであるマーティン・エドルンドは、「西アフリカやインドなどマラリアの高負荷国は、今後数か月でマラリアとCOVID-19の感染危機が高まりピークを迎える二重の危機に直面しています。私たちは何十万人という命を守り、何千万もの更なるマラリア患者で保健システムが圧迫されることを防ぐことを支援する重要な局面にいます」と述べています。「2014年のエボラ出血熱の流行は、最善の防御は優れた攻撃であることを示しました。発熱から始まるマラリアやCOVID-19も、前線に立つヘルスワーカーの努力を、安全を保持しながら最大限に引き出すことが求められます。地域レベルでマラリアの予防・スクリーニング・診断・治療を進めることで、地区や国の病院での深刻なマラリアの発生を拡大することを食い止めることができます。」

COVID-19は、薬剤浸漬蚊帳(Insecticide Treated Net:ITNs)やその他効果的なベクターコントロール(媒介害虫制御)や予防療法を妨害し、マラリアの早期診断・治療を確保する保健サービスへのアクセスを制限する恐れがあります。地域レベルでの包括的なマラリア症例管理が不可能になり、マラリア対策に取り組むことが困難になると、その社会で脆弱な立場に置かれやすい5歳未満の子どもや妊婦はとりわけ危機に晒されるだけではなく、保健システムの機能不全によって治療されず放置された場合、深刻で致命的なマラリア症例が増加する状況を作ってしまいます。逆説的に言えば、病院での治療を必要とするマラリアの増加は、多くの国が効果的なCOVID-19対応策を開始することを不可能にします。

WHOの技術ガイドラインによれば、マラリアが流行している国ではその多くが雨季に入る6月前に対策をとる必要があります。もっとも重要なことは、前線にいるヘルスワーカーたちにこのパンデミックの間でも安全に必要なマラリアに関する治療を行えるようにトレーニングと防御服を支給することです。また、国と事業実施団体の連携を強化し続け医療備品を調達し、COVID-19がマラリア患者の命を守る薬やツールのサプライチェーンに及ぼす影響を緩和することも重要です。

ベナンやコンゴ民主共和国、ニジェール、シエラレオネ、チャドといったいくつかの国では、COVID-19に対する予防策を講じる一方で、もともと計画されていたマラリアプログラムの継続を求められており、ITNsの大量配布キャンペーンが進んでいます。

アメリカ、投資で先鞭をつける U.S. investments lead the way

ゼロマラリアに貢献する世界有数の国であるアメリカでは、対マラリア投資は年毎に増額しており、アメリカの支援によって5億人がマラリア感染の危機から救われたと考えられています。プレジデント・マラリア・イニシアティブ(PMI)グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)などを通じて、アメリカによる支援は個人や国レベルでの保健や経済の強靭性(レジリエンス)に対する多元的な努力に寄与しています。

「過去15年でアメリカによる投資はマラリア対策の促進に多大な役割を果たし、私たちの世代でマラリアを制圧する道筋をつけてきました」と、マラリア・ノーモアの業務執行理事であるジョシュ・ブルーメンフェルドは指摘しています。

「これは毎年、保健の安全保障やマラリアなど感染症の制圧に投資する重要性について党に関わらず議員内で理解していたからこそです。COVID-19はマラリアと言った既存の感染症や新興感染症などを予防するための強固で強靭な保健・サーベイランスシステムの構築に投資する重要性をこれまで以上にしめすことになりました」。

毎年世界マラリアデーを前に年間計画が発表するPMIとグローバルファンドは各国の保健制度を強化するために年10億ドル以上の投資を行っています。この投資には活動の最前線に立つヘルスワーカーの訓練やサプライチェーンの向上、国ごとの研究能力の強化、包括的な保健サービスの促進などが含まれており、こうした投資を通じてマラリアだけではなく、エボラ出血熱やCOVID-19など別の疾病との戦いに打ち勝つ一助になると考えられています。

インドのマラリア対策プログラムが準備完了 India’s Malaria Programs At-the-Ready

世界でも有数のマラリアの流行国であるインドでは、マラリア感染件数は2016年から2018年にかけて50%以上削減となり、最も急激な減少となりました。インドの中でもマラリア感染率の高いオディッシャ州では、薬剤浸漬蚊帳(Insecticide Treated Net:ITNs)の配布のような強化された継続的な取り組みの橋渡しから、マラリア被害の高い村で雨期に入る前にマラリアの治療や診断をする州政府のデータに基づく戦略が成功しました。COVID-19は、こうした取り組みが過去2年間で達成したマラリア発生件数の8割削減という成果を元の木阿弥にしてしまう可能性が指摘されています。

「ロックダウンによって、農村部や少数部族が暮らす地域でのヘルスワーカーやASHA(Accredited Social Health Activist、アシャ、公認ヘルスワーカー)の移動が制限されたことで、感染症サーベイランスや、危険に晒されている家族との直接的な対話に影響を与えています。他方、ITNsはオディッシャ州などマラリア感染率の高い州ですでに配布が終了しているほか、雨季前にマラリア制圧対策の強化をするなどあらゆる対策が取られています」とマラリアノーモア・インドの国代表であるサンジーブ・ガイクワド博士は述べています。「ロックダウンが解除された直後、6月上旬の雨季開始前までにこれらの事業を始められたら、インドのゼロマラリアの取り組みは維持することは可能でしょう」。


2020年4月25日世界マラリアデーのテーマは「ゼロマラリア~いっしょに始めよう(Zero Malaria Starts with Me)」World Malaria Day (April 25) Theme: “Zero Malaria Starts with Me”

2000年以来、世界のゼロマラリアの試みは700万人以上の命を救い、10億人以上がマラリア感染を逃れることができました。こうした大きな進歩がみられた一方で、マラリア感染リスクの高い国では、今も2分にひとりの子どもが、マラリアによって命を奪われているのです。

2020年の世界マラリアデーのテーマは「ゼロマラリア~いっしょに始めよう(Zero Malaria Starts with Me)」。アフリカ大陸で始めていた同名のキャンペーンに触発されて始まったこのキャンペーンは、政策立案者、民間企業、コミュニティやその他ステークホルダーを巻き込み、ゼロマラリア達成のためにできることを呼び掛けています。