[米国発]マラリア・ノーモアUSで新プロジェクト「FORECASTING HEALTHY FUTURES(健康な未来を予測する)」開始:天気データが蚊媒介感染症の削減に影響するか?

本記事は2月20日Malaria No More USのリリース「NEW INITIATIVE, “FORECASTING HEALTHY FUTURES,” WILL HARNESS WEATHER DATA TO HELP DEFEAT MOSQUITO-BORNE DISEASE」を日本語訳したものです。


2月20日、マラリア・ノーモア・USは「最後の1マイルを目指せ:グローバルヘルスイニシアティブ(Reaching the Last Mile Global Health Initiative)」、PATH、Institute for Health Metrics and Evaluation (IHME)、タブロウ財団(Tableau Foundation)、及びIBMの気象予報会社と共に、ヘルス課題に対する新たなイニシアティブを発表しました。

「FORECASTING HEALTHY FUTURES(健康な未来を予測する)」と題されたこの取り組みは、気象データに基づいて蚊媒介感染症に対する流行予測を行い、天候パターンの変化や極端な気象現象が増えるなか、政府及びパートナー団体が、より適切なタイミングに効果的な対象疾患対策を行うことを手助けするものです。

マラリア、デング熱、チクングニア熱、黄熱病、ジカ熱など蚊媒介感染症は、年間3億4000万人が感染する、人類にとって脅威の一つ。とりわけ最も貧しい周辺地域に暮らす人々に大きな影響を及ぼしています。蚊媒介感染症の特徴は、気象の変化に影響されること。近年の気候変動は、これらの蚊媒介感染症を効果的に予防し、コントロールし、排除することへの一つの脅威となっています。

「気象情報の蚊媒介感染症対策への活用は、世界で最も脆弱な、とりわけ妊婦や子どもをマラリアやデング熱と言った死に至る可能性がある病から守る革新的なものになるでしょう。マラリアやデング熱といった病を撲滅するために学際的アプローチを用いてヘルス分野と技術や気候変動といった異なる分野を横断させて、議論を加速させる必要があります。」モナ・ハマミ・「最後の1マイルを目指せ:グローバルヘルスイニシアティブ(Reaching the Last Mile Global Health Initiative)」シニアディレクター

Devexの「進化のための処方箋:ヘルス解決策の規模拡大へ(Prescription for Progress: Bringing Health Solutions To Scale)」会議で、「FORECASTING HEALTHY FUTURES」は発表されました。アブダビ皇太子府のイニシアティブである「最後の1マイルを目指せ:グローバルヘルスイニシアティブ」が150万ドルを出資し、また同ネットワーク全体から技術的な専門知識を提供します。マラリア・ノーモア、PATHとInstitute for Health Metrics and Evaluation (IHME)はそれぞれの団体の保健に関する専門性だけではなくプログラムや政策ガイドラインを提供することになります。タブロウ財団はデータ分析とデータ視覚化スキルを強化するために、財政支援、ソフトウェアライセンス、トレーニングを提供します。

「私たちの世代でゼロマラリアを達成するためには、気象による障壁を機会に変える必要があります。このことは、気候変動が蚊媒介感染症の有病率に及ぼす影響を緩和するだけではなく、気象関連データと戦略を活用してマラリアをはじめとする蚊媒介感染症に対する進歩を加速することを意味します。」(マラリア・ノーモアCEOマーティン・エドルンド)

公衆衛生を改善させるために、「FORECASTING HEALTHY FUTURES」は気象データと蚊の生息分布データを、感染リスク、対策実施エリア、必要な支援物資配給の流通や疫学的データと組み合わせることにより、新しいデータシステムと戦略を作ります。「IBMの気象予報会社が提供する気象や気候データを高度な分析と共に用いることで、より深い洞察が可能になり、情報に基づくより良い決定がなされ、世界中の気温の上昇や異常気象に伴う蚊媒介感染症が拡大することを防ぐことができると考えています」とIBMコーポレート社会責任におけるグローバルヘルス・リーダーのナタリー・ダウは述べています。

本事業を通じて、協力団体はマラリアの影響を受ける国の国家や州のベクターコントロールプログラムとドナー国政府やグローバルな政策立案者と緊密に連携して、変化する気象パターンの影響に関する研究ニーズを特定します。また、一連のデータを使用して、蚊媒介感染症の管理プログラムの効率と有効性を強化する証拠に基づくシステムを開発します。

「保健システムのすべてのレベルでのデータ分析、データ視覚化や意志決定のためのデータ活用能力を高めることにより、最適な時間で対象疾患対策をする能力を大幅に向上させます。気象データを組み込むことにより蚊媒介感染症を制圧する取り組みを加速させる可能性があります。」PATHマラリア・顧みられない熱帯病(NTDs)部長カメール・シュナイダー

初期成果をもとに、本事業は世界中のマラリアの影響を受ける国の何百万人もの人々を対象とする蚊媒介感染症管理プログラムと健康教育の取り組みへの気象データの迅速な統合のため、支援国政府と保健に関わる国際機関からの支援を求める予定です。

「FORECASTING HEALTHY FUTURES」はインドのオディッシャ州およびサブサハラアフリカで第1弾が開始。

オディッシャ州では、2017-2018年にかけて同州の政府はモンスーンの季節の前に村落レベルでのマラリア診断と治療をするための取組みを劇的に拡大し、それにより感染率減少に成功しています。オディッシャ州におけるマラリアに罹る患者数は過去2年間で84%減少することに成功しました。PATHとタブロウ財団がアフリカで共同実施する取り組みと国家マラリア排除プログラムとを連動することで、リアルタイムのデータを使用し、何千人もの医療従事者にデータリテラシートレーニングとツールを提供、包括的なマラリア監視システムを構築しました。この取り組みは現地の保健分野に従事する人にとっても、自分たちの取り組みがどれだけ大きなインパクトを生み出す一助になるか、体感することを可能にしています。

「セネガルとザンビアでPATHと共に「ゼロマラリアに向けた取り組みを視覚化する(Visualize No Malaria)」プログラㇺを実施したように、タブロウ財団のソフトウェアとデータ分析技術を活用して、最前線で活動する人々は、世界で最も蚊媒介感染症の影響を受けやすい人を守るために、より効果的で予防可能な方法について十分な情報を得て、決定することができます。」タブロウ財団グローバルヘッド/ニール・マイリック

加えて、「FORECASTING HEALTHY FUTURES」は、モザンビークのサイクロン「イダイ」などの極端な気象現象への対応や、雨季にマラリア流行国で行われる大規模な季節性マラリア予防キャンペーンにも有用であると考えられています。

「気象データはPMIにとって重要です。「FORECASTING HEALTHY FUTURES」のベストプラクティスを共有し、PMIパートナー国と協力して気象データを使ってマラリア対策を加速させることを楽しみにしています。」合衆国の大統領マラリアイニシアティブ(U.S. President’s Malaria Initiative (PMI))グローバル・マラリア・コーディネーター/ケネス・スタンリー博士

イニシアティブは後日文書化され、成果を各国で共有、世界的な政策、政治的・資金的決定機関に情報提供し、官民連携した気象予測とヘルスシステムの構築に役立てられます。また、感染症、天候パターンの変化や気候変動が横断的に交差した取り組みであることを政策協議の場にインプットしていくこともこのイニシアティブの目標です。


About Malaria No More

「マラリアのない世界」を目指して、マラリア・ノーモアは2006年アメリカで発足しました。ゼロマラリアをめざし、政策決定者、民間企業、国際機関などと連携し私たちの世代でマラリアを廃絶することを目指します。
Malaria No More HP:https://www.malarianomore.org/

About 「最後の1マイルを目指せ:グローバルヘルスイニシアティブ(Reaching the Last Mile Global Health Initiative)」

The Reaching the Last Mile Global Health Initiativeはアラブ首長国連邦・アブダビ皇太子府が進める、グローバルヘルスの取り組みです。このイニシアティブは、疾病排除を行うための「最後の1マイル」を達成するために、質の高い保健サービスへのアクセスがないコミュニティでの治療や予防を提供します。ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン・アブダビ皇太子は世界の最も貧しく脆弱なコミュニティに影響を及ぼす予防可能な疾病に取り組み、多くの子どもと大人が健康で尊厳ある生活を送ることができるように支援しています。
https://www.reachingthelastmile.com/, @RLMGlobalHealth

About PATH

PATHは、すべての人々とコミュニティが繁栄できるように、健康の公平性を高めるために取り組んでいるグローバルイノベーター集団です。 PATHは、あらゆる規模の機関、投資家、企業へアドバイス・提携して、世界で最も差し迫った健康上の課題を解決します。 より良い健康は人類を前進させるからです。
https://www.path.org/

About Tableau Foundation

The Tableau Foundationは 「Tableau Software」の慈善イニシアティブの財団であり、世界の課題解決のために事実と分析的思考の使用を奨励しています。当財団の助成金は、Tableauの最も貴重な人材とその製品を、世界中のコミュニティ再構築のためにデータを使用している非営利団体への財政支援と組み合わせて行っています。
www.tableaufoundation.org.

About IHME

2007年に設立されたワシントン大学医学部内にある独立した保健指標評価研究拠点です。世界の最も重要な健康問題について厳密で比較可能な測定を行い、それらに取り組むための戦略の評価を行っています。IHMEは、透明性を確保し、政策立案者がエビデンスに基づいて人々の健康を改善するための最適な資源配分を行うことができるように、情報を提供しています。
www.healthdata.org.