2022年「世界マラリア報告書」へのマラリア・ノーモアからの声明

(ワシントンDC、2022年12月8日)マラリア・ノーモアCEOのマーティン・エドルンドは、世界保健機関(WHO)が公表した「2022年世界マラリア報告書」について以下の声明を発表しました。

「WHOの世界マラリア報告書は、2年連続でマラリア患者が増加し、2021年だけで2億4700万人の患者が発生したという結果を示しました。他方で、アメリカをはじめとする各国の努力により、2000年以降、20億人がマラリア感染から逃れ、1170万人の命が救われており、2021年単年では約100万人の命が救われたと推定されています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは、2020年と2021年の間に保健システムに大きな混乱をもたらし、各国の保健予算を圧迫しました。その上、マラリア対策においては、抗マラリア薬に対する耐性の増加、世界的なサプライチェーンの混乱、気候変動による感染症の増加、その他の保健上の緊急事態など、さまざまな課題に取り組む必要があります 。

パンデミックが引き起こした混乱を経て、マラリア検査および治療が再開され、そしてマラリア予防のための蚊帳の配布が継続されたことは、心強い出来事です。さらに、ゼロマラリア達成のための研究開発が進められており、今後数年間で大きな進展が見られる可能性があります。

私たちは、マラリア対策が、世界中の脆弱な人々の命を救い、生活を向上させるための最も費用対効果の高い方法であると考えます。今こそ、米国のリーダーシップと世界的な取り組みを倍加させるべき時です。私たちはバイデン政権と米国議会に対し、米国大統領のマラリア対策への拠出を引き続き増やし、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)に今後3年間、年間20億ドルを資金提供するという公約の確実な履行を求めます。これは、有効性と高い投資収益率を実証しているプログラムであり、蚊に刺されて死ぬ子どもがゼロになる未来のための重要なプログラムなのです。」

 

同時に、Malaria No More Japanの神余隆博理事長もコメントを発表しました。    

「本年のWHO報告書によれば、2021年は、マラリアによる死者数と感染者数は、COVID-19のパンデミックによるマラリア対策の遅延のために感染者数・死者数共に増加した前年度から大きな改善はなく、感染者はむしろ微増したことが明らかになりました。このことは、コロナ禍で後退したマラリア感染状況が2019年以前の状況にまで戻っていないことを意味しています。    

日本が議長国となる2023年G7広島サミットでは、COVID-19が引き起こした世界的な分断とCOVID-19を含む新興感染症対策が議論されることが予想されます。その中で、三大感染症のひとつであるマラリアが、2000年代はじめのように毎年100万人もの子どもの命を奪う事態まで後退することを回避するために、従来のマラリア対策に加え、薬剤耐性や殺虫剤抵抗問題など新たな問題にも取り組む必要があります。私たちは、来るG7広島サミットに加え、これまで日本が主導してきたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関するハイレベル会合や国連総会などにおいて、産官学連携してゼロマラリアへ向けた日本の戦略的、且つ、実効性のあるリーダーシップをとることを強く求めます。

世界が約束した「2030年までにマラリアを排除する」という目標達成に向け、マラリア・ノーモア・ジャパンは政策提言を通じて日本政府を後押しし、日本のマラリア排除へのコミットメントと必要な取組が確実に実行され、具体的な成果を上げ続けることができるよう活動を続けていきます。」 

 


マラリア・ノーモア(Malaria No More)について

Malaria No Moreは、蚊に刺されて死ぬ人が一人もいなくなる世界を目指し活動しています。設立以来15年にわたり、ゼロマラリアの世界づくりに向け貢献してきました。現在、私たちの世代でマラリアを撲滅するという、人類史上最も偉大な偉業を達成するために必要な政治的コミットメント、資金やイノベーションを結集する活動を行っています。詳しくは、www.malarianomore.orgをご覧ください。

マラリア・ノーモア・ジャパン(Malaria No More Japan)について

Malaria No Moreのアジアの拠点として、2012年に発足し、2022年に10周年を迎えます。産官学との連携を強化するZEROマラリア2030キャンペーンをはじめ、日本政府への政策提言や企業連携を通じたマラリアの啓発活動などを展開しています。詳しくは、www.malarianomore.jp まで

マラリア・ノーモア声明文の英語原文はこちらからご覧いただけます。