MNMUK、「The Zero Malaria Experience」公開

マラリアとの闘いにおける科学の力を示す 2024年の「マラリアの現状」

11月4日、マラリア・ノーモアUKは、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)やザ・ミル(The Mill)のビジュアル・クリエーターなどさまざまなパートナーと連携し、最先端のクリエイティブ・テクノロジーを駆使して、新しい没入型の『The Zero Malaria Experience(ゼロマラリアの経験)』を通じて、ゼロマラリアの未来が達成可能であることを映像で表現しました。

「Zero Malaria Experience(ゼロマラリア・エクスペリエンス)」誕生のきっかけ

マラリアとの闘いは人類最古の闘いのひとつであり、2022年には25億人近い患者が発生したと推定されています。政治的コミットメントと科学的イノベーションの力によって、過去70年間、特に2000年以降、ゼロマラリア達成にむけた大きな前進が見られました。2000年以降、マラリアによる死亡率は半減し、16カ国が「ゼロマラリア」の状態であることを、WHOより認定されています。

マラリア・ノーモアUKでは、アフリカ主導の「ゼロ・マラリア・スタート・ウィズ・ミー(Zero Malaria Starts With Me)」キャンペーンから生まれた「ゼロ・マラリア」キャンペーンを通じて、世界中の市民を団結させマラリアのない世界は、すべての国々をより安全で、より強く、より繁栄させることを訴える取り組みを行ってきました。

今回公開された「The Zero Malaria Experience」では、ゼロマラリア大使であるデビッド・ベッカムや、政治リーダーやマラリアチャンピオンが出演し、ゼロマラリアに向けた技術革新と科学研究の役割に焦点を当てています。ICLのモデルを用いて、今後15年間で主要なツールや治療法が普及すれば、1300万人以上の命(その大半は5歳未満の子ども)を救えると示しています。

ゼロマラリア進展と達成を阻む課題

2024年現在、世界保健機関(WHO)により承認されたマラリアワクチンが、アフリカのいくつかの国で初めて、定期予防接種プログラム(パイロットプログラム以外)での展開を開始されました。第二世代ITNなどの既存の手段と併用し、将来世代のワクチンやモノクローナル抗体などの可能性のある新しい治療法で補強すれば、さらに数百万人の命を救うことができると期待されています。

21世紀初頭に大きな進展があったにもかかわらず、マラリアは依然として世界的な疾病と死亡の主な原因であり、その負担は圧倒的にアフリカの低所得国に多くのしかかっています。WHOの世界マラリア計画(GMP)が発表した「世界マラリア報告2023」によれば、2022年には推定2億4,900万人が感染し、6万8,000人が死亡し、その76%が5歳未満の子どもでした。

貧困の病であるマラリアは、保健システムを弱体化させ、経済を混乱させ、世界の健康と経済的安全保障を脅かします。過去20年間に大きな進展があったとはいえ、死亡率と罹患率は現在、COVID-19パンデミック以前の水準を上回っています。国内支出や民間部門の貢献が増加したにもかかわらず、低所得のマラリア常在国は依然としてドナー資金に大きく依存しており、マラリア資源の66%は外部資金によるものです。世界のマラリア対策は現在、資金不足、薬剤耐性、殺虫剤耐性、気候変動、人道危機など、課題が収束する「パーフェクト・ストーム」に直面している。

5つのパーフェクト・ストーム ポイント
人道的・グローバルヘルスの緊急事態 2019年から2022年の間に、41のマラリア流行国が人道的危機に直面し、これらの国の多くで、マラリア患者数と死亡者数が大幅に増加した。
生物学的脅威 殺虫剤耐性、薬剤耐性、寄生虫耐性が既存のマラリア対策の効果に影響を及ぼしている一方、最近発見されたAn. stephensiは農村部と都市部の両方で繁殖しており、アフリカの10カ国で検出され、都市化が進む地域におけるマラリア感染の拡大を脅かしている。
気候変動 気候変動によって、マラリアはより予測不可能となり、制御を困難にしている。2022年にパキスタンで、2023年にモザンビークで見られたように、短期的な異常気象がマラリア発生件数の急増を引き起こした。
資金不足

前回のグローバルファンドの増資は、記録的な水準の資金を達成したものの、目標額には届かず、現在進行中の世界的な金融危機の影響や国内資金調達への圧力と相まって、マラリアに対する大幅な資金不足を招いている。マラリア撲滅のためのRBMパートナーシップ(RBM)とアフリカリーダーズマラリアアライアンス(ALMA)のために、マラリア・アトラス・プロジェクトが最近発表したモデリングによると、グローバルファンドを通じて受け取るマラリアのための資金が2027年から2029年まで横ばいで推移した場合、マラリア感染件数が1億1,200万人、マラリアによる死亡者が最大で28万700人増加すると推定され、アフリカ大陸全域でマラリアの急増と大発生につながると予測される。

これら5つの「パーフェクト・ストーム」を乗り切り、マラリア対策や治療法を最も必要とする人々に確実に届けることができるよう、優先的に投資を行う必要があります。今回の「The Zero Malaria Experience」は、マラリア対策へのさらなる投資が、より多くの人の命を救うための可能性を秘めています。

映像制作の裏側を紹介した映像はこちらから視聴いただけます。