2024年版『世界マラリア報告書』、12月11日に公表

12月11日、世界保健機関(WHO)は世界マラリア報告書2024』を公表しました。

ゼロマラリアの達成は可能

『世界マラリア報告書2024』は、マラリア対策における目覚ましい前進と、その撲滅に向けた多面的で根強い課題の両方が紹介されました。すでに44カ国でマラリア・フリーであると認定され、マラリアワクチンの継続的な採用など重要な技術革新が具体的な成果をあげていることから、ゼロマラリアの達成は可能であることが、再認識されました。

しかし、ゼロマラリアに向けた進展のペースは鈍く、2023年の世界のマラリア感染者数は推定2億6,300万人(前年比4.4%増)、死亡者数は59万7,000人(同1.8%減)となり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行が起きる前の2019年に記録された死亡者数57万6,000人を3.6%上回りました。この数字は、薬剤耐性や殺虫剤耐性、気候変動の影響、脆弱な保健システム、資金不足など、新たな脅威の増加との闘いが続いていることに起因しています。

例えば、サブサハラアフリカでは、高いアルテミシニン耐性とパートナー薬剤耐性のために、5年間で7,800万人のマラリア患者が増えると推定されています。資金面では、2023年に世界全体で40億ドルが投資されましたが、これは資金目標総額83億ドルの48%に相当し、世界的な進展を支えるために必要な資金を満たす努力を続ける必要があることを示しています。

報告書では、17カ国の小児期定期予防接種プログラムにマラリアワクチンを含む新たなツールが導入されたことで、マラリアとの闘いに継続的な変革がもたらされていることを強調しています。しかし、予防接種範囲の格差や世界的な取り組みの断片化が、さらなる進展を妨げています。例えば、サブサハラアフリカでは、5歳未満の子どもや妊婦、女児の40%以上が、殺虫剤処理された蚊帳の下で眠っていませんでした。

最も脆弱な人々に関する章を設定

「世界マラリア報告書2024」では、新たな試みとして、最も脆弱な人々に関する章を初めて設け、より包括的で効果的な対応のために介入策を調整するための新たな指針を提供しています。

進展を加速するための戦略は、政治的意思の強化、国際的支援と現地のニーズとの整合性、実証済みの介入策へのアクセス拡大と新たなツールの開発、公平性の促進、マラリア脆弱性の根本原因への取り組みに焦点を当てることです。世界のマラリア・コミュニティは、協調的な行動によって何が可能かを実証してきましたが、この報告書は、持続的な技術革新、資金調達、コミットメントがなければ、せっかく獲得したマラリア対策の成果が逆戻りする危険性があることを指摘しています。

制圧への道を歩み続けるために必要な政治的意思と資源を確保するためには、思慮深く戦略的なアドボカシーが必要です。来年のグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)とGaviワクチンアライアンスの次回の増資を前に、Malaria No More は引き続き、主要な資金の流れを守り、制圧への「ビッグ・プッシュ」を支援する次世代のチャンピオンを育成することに注力していきます。

「世界マラリア報告書2024」からの主要な数値

◆ 2000年から2023年にかけて、世界で22億人の感染と1,270万人の死亡が回避された。

◆ 2023年だけで、マラリアの介入策により1億7,700万人の感染が予防され、100万人の命が救われた

◆ 44カ国と1地域がマラリア・フリーと認定され、エジプトは2024年10月にマラリア・フリーと認定された。

◆ マラリア感染者数は2022~2023年には1,100万人増加し、その94%がWHOアフリカ地域であった。

◆ 2023年の感染者数 2億6,300万人、2022年の感染者数は2億5,200万人だった。

◆ 2023年の世界全体でのマラリアによる死亡者数は59万7,000人であったのに対し、2015年は57万8,000人であった。このうち約95%(56万9,000人)がWHOアフリカ地域での死亡者であった。

◆ アフリカ地域における死亡者の約4分の3(76%)は5歳未満の小児(43万2,000人)であった。


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