米国におけるマラリア対策アドボカシー強化:PMI予算削減の危機と最新声明

Malaria No Moreは、米国においてPresident’s Malaria Initiative(PMI)を核とするマラリア対策を守るため、国際保健予算の確保と政策アドボカシーに注力しています。政権移行やUSAIDの閉鎖など、不安定な政情下でも、PMIの継続と強化を訴え続けています。

PMIとは? マラリア対策の国際的取り組み

PMI(President’s Malaria Initiative、プレジデント・マラリア・イニシアティブ)は、2005年に当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領によって設立された、マラリア撲滅を目的とする国際的なプログラムです。

当初はサブサハラ・アフリカの15か国でマラリアによる死亡率を50%削減することを目標として始まりました。現在では、アフリカ24カ国とグレートメコン地域の3カ国に活動が拡大し、約5億〜7億人を対象に支援が行われています。

このプログラムは、米国国際開発庁(USAID)が主導し、米国疾病予防管理センター(CDC)と共同で実施。さらに、各国の国家マラリアプログラムや世界保健機関(WHO)、グローバルファンド(Global Fund)などと連携し、効果的なマラリア対策を進めています。

PMIは発足以来、マラリア対策において大きな成果を上げています。2000年から2019年の間に、マラリアによる死亡率を60%以上削減し、推定760万人の命を救い、15億件の感染を防止しました。

さらに、最新のモデル試算によると、資金が継続されれば2025年までに約1,490万件の感染と10.7万人の死亡を防ぐことが可能とされています。これは、PMIの対象地域全体でみると感染負荷の約12.6%、死亡負荷の約39%を軽減できる規模です。

政治状況と現在の危機

2025年度、PMIの年間予算は当初約10億ドルと見込まれていましたが、政権の決定により約47%削減され、約4億2,400万ドルにまで大幅カットされました。

この資金削減の影響は深刻で、特にコンゴ民主共和国(DRC)などでは、抗マラリア薬や妊婦向け予防薬の供給が滞り、疾病監視システムが機能不全に陥る懸念が高まっています。

さらに、モデル予測によると、この削減が完全に実施された場合、年間最大170万人の感染再発と約16.6万人の死亡が追加で発生するリスクが指摘されています。

最新声明:FY26予算案に関する米国議会の動き

2025年7月、米国下院歳出委員会はFY26国防・国務省関連予算案(NSRP法案)を承認し、その中でPMIへの8億ドル規模の資金を確保する方針が示されました。Malaria No Moreはこれを歓迎する声明を発表し、マーティン・エドルンドCEOは以下のように述べています。

「今回の動きは、米国が超党派でマラリア根絶へのリーダーシップを維持する強い意思を示すものです。予算削減は現場での命を危険にさらすものであり、最終的な予算決定まで引き続き資金維持に向けた働きかけを続けていきます。」

この声明は、予算削減が完全実施された場合の甚大な影響を警告し、PMIの資金基盤を守るために議会内で超党派の支持を固める重要な一歩となりました。

PMIを守るための闘い:Malaria No Moreのアドボカシー活動

Malaria No Moreは、PMIの存続と資金維持を求めて積極的なアドボカシー活動を展開しています。2025年4月25日の世界マラリアデーには、議会のチャンピオン議員やパートナーとともにイベントを開催し、PMIへの政治的支援の必要性を訴え、予算削減の撤回に向けた動きを加速させました。

アドボカシーの影響と今後の展望

これらの活動は、議会内外で大きな反響を呼びました。一部の議員がPMI予算維持の必要性を公然と支持し、超党派でマラリア対策を守る動きが広がっています。

現時点では完全な予算復元には至っていませんが、FY26予算案の承認はPMI削減を阻止するための重要な進展であり、今後の最終交渉に向けて政治的圧力が強まっています。

Malaria No Moreは今後も、国内外のパートナーと協力しながら、命を救うマラリア対策を継続的に支援するための財源確保を訴え続ける方針です。

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